性同一性障害の2女子学生に男性名で学位
県立大(甲府市)の卒業式で25日、心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)の女子学生2人に、男性の名で卒業証書が渡された。本人の希望を尊重し、大学が認めた。学生の1人は「周囲のみなさんのおかげ。(男性であることが)公の場で認められてうれしい」と話した。(柏原愛)

県民文化ホール(甲府市寿町)であった卒業式には、卒業生約270人が出席。入学した時とは違う、男性の名前を呼ばれた学生の1人は、大きな声で「はい」と返事をした。
式の後、この学生は「おれの名前、変わったでしょ」と、友人たちにうれしそうに話しかけた。友人の1人は「入学した時は女の子だったけれど、今は男の子であることが当たり前。それでも、男性の名前で呼ばれるのを聞いた瞬間、感無量だった」と、一緒に喜んだ。
幼いころから「自分は男だ」と意識していたこの学生は、中学に入ったころ、違和感が嫌悪感に変わったという。男子は詰め襟、女子はセーラー服と区別されることが嫌だった。それでも堪えてきたが、大学に入学して初めて、胸のうちを、学内のカウンセリングで精神科医の坂本玲子さんに打ち明けた。
自分の心に素直に生きるようにアドバイスされ、気持ちが楽になったという。
「全然気づいてあげられなかったね。ごめんね」。1年生の夏、涙を流しながら「告白」を聞いた母親は、「どんなことがあっても受け入れてあげるから」と、励ましてくれた。精神科の治療や男性ホルモンの投与、胸の手術の同意書にサインをしてくれた父親のやさしさも、身にしみた。
昨年11月、医療機関で正式に性同一性障害だと診断され、翌月に胸の手術を受けた。
卒業証書に書かれた男性名は、親と一緒に考えた。「もう一度、親につけ直して欲しいと思ったから」。画数や意味を調べ、本名から1文字をとったという。
「両親にも見せたい」。受け取った証書を開き、笑顔をみせた。卒業後は、予備校に通い、もう一度大学受験に挑戦する。4年間、自分と向き合い、初めて自分がやりたいことがはっきりした。医療・福祉系への進学を目指すという。
◇「悩みを受け止め 納得いく卒業を」学長
大学によると、GIDと診断された卒業生が、もう1人おり、本名での卒業証書受け取りや式出席を嫌がったという。2人の学生に対し、希望する男性名で証書を渡すことは、2月下旬の評議会で全会一致で決まった。
2人がGIDで悩み続けていたことを、学内の仲間も教授たちも理解していた。さらに、2人が今後、戸籍の性別も変更する予定であることなどから、異論はなかったという。
伊藤洋学長は「県立大学には看護学科や福祉学科があり、GIDに関する知識を持った学生が多い。2人が自分の思いを素直に表現できる環境があった」と述べ、「人生の旅立ちの日に、私たちが悩みを受け止め、納得のいく名前で卒業させたかった」と話した。
2人を支えてきた保健師の末木恵子さんは「青年期は自我を確立する時期。2人はこの4年間、自分を見つめ直すことができたと思う。人に対する信頼感も変わってきたはず。これからも、積極的に主張してもらいたい」と話した。
《性同一性障害》 心と体の性が一致しないために、社会的、精神的に困難な状況を抱えている状態。2004年の性同一性障害特例法施行で、条件を満たせば戸籍の性別を変更できるようになった。国内では、埼玉の公立小学校の男子児童が、女子として通学することを認められたり、鹿児島の女子中学生に男子用学生服の着用が認められたりした例がある。
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県民文化ホール(甲府市寿町)であった卒業式には、卒業生約270人が出席。入学した時とは違う、男性の名前を呼ばれた学生の1人は、大きな声で「はい」と返事をした。
式の後、この学生は「おれの名前、変わったでしょ」と、友人たちにうれしそうに話しかけた。友人の1人は「入学した時は女の子だったけれど、今は男の子であることが当たり前。それでも、男性の名前で呼ばれるのを聞いた瞬間、感無量だった」と、一緒に喜んだ。
幼いころから「自分は男だ」と意識していたこの学生は、中学に入ったころ、違和感が嫌悪感に変わったという。男子は詰め襟、女子はセーラー服と区別されることが嫌だった。それでも堪えてきたが、大学に入学して初めて、胸のうちを、学内のカウンセリングで精神科医の坂本玲子さんに打ち明けた。
自分の心に素直に生きるようにアドバイスされ、気持ちが楽になったという。
「全然気づいてあげられなかったね。ごめんね」。1年生の夏、涙を流しながら「告白」を聞いた母親は、「どんなことがあっても受け入れてあげるから」と、励ましてくれた。精神科の治療や男性ホルモンの投与、胸の手術の同意書にサインをしてくれた父親のやさしさも、身にしみた。
昨年11月、医療機関で正式に性同一性障害だと診断され、翌月に胸の手術を受けた。
卒業証書に書かれた男性名は、親と一緒に考えた。「もう一度、親につけ直して欲しいと思ったから」。画数や意味を調べ、本名から1文字をとったという。
「両親にも見せたい」。受け取った証書を開き、笑顔をみせた。卒業後は、予備校に通い、もう一度大学受験に挑戦する。4年間、自分と向き合い、初めて自分がやりたいことがはっきりした。医療・福祉系への進学を目指すという。
◇「悩みを受け止め 納得いく卒業を」学長
大学によると、GIDと診断された卒業生が、もう1人おり、本名での卒業証書受け取りや式出席を嫌がったという。2人の学生に対し、希望する男性名で証書を渡すことは、2月下旬の評議会で全会一致で決まった。
2人がGIDで悩み続けていたことを、学内の仲間も教授たちも理解していた。さらに、2人が今後、戸籍の性別も変更する予定であることなどから、異論はなかったという。
伊藤洋学長は「県立大学には看護学科や福祉学科があり、GIDに関する知識を持った学生が多い。2人が自分の思いを素直に表現できる環境があった」と述べ、「人生の旅立ちの日に、私たちが悩みを受け止め、納得のいく名前で卒業させたかった」と話した。
2人を支えてきた保健師の末木恵子さんは「青年期は自我を確立する時期。2人はこの4年間、自分を見つめ直すことができたと思う。人に対する信頼感も変わってきたはず。これからも、積極的に主張してもらいたい」と話した。
《性同一性障害》 心と体の性が一致しないために、社会的、精神的に困難な状況を抱えている状態。2004年の性同一性障害特例法施行で、条件を満たせば戸籍の性別を変更できるようになった。国内では、埼玉の公立小学校の男子児童が、女子として通学することを認められたり、鹿児島の女子中学生に男子用学生服の着用が認められたりした例がある。
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